進藤昌次さん・礼子さんご夫妻/旭市江ケ崎在住
移住の決め手は「自然体」。
人も暮らしもフラットな新生活
昌次さんの定年退職を機に、田舎の平屋でゆっくり過ごすためにご夫妻で旭市へ移住。書家である奥様の礼子さんは旭市で書道教室を開く予定で、紹介のために「おひさまテラス…
韓国出身の芸術家であり、「古民家美術館飯岡」の館長を務めるユン・ソベさん。韓国ではアーティストとして創作活動を行うだけでなく、25年間大学で美術を教えていました。11年ほど前に来日してアーティストのジュエリーデザインなどを手がけ、横浜に店舗を構えるほどに。また、ヨーロッパやアジアなど各国を回りながら作品を創り、海外での展示会や現地アーティストとのコラボレーションを行うなど、世界を舞台に活動を続けています。
そんなユンさんが旭市に移住したきっかけのひとつが、大学で専攻していた西洋絵画や金属工芸、そして建築を学んでいるときに惹かれた“日本の古民家”でした。
「日本の家造りは、韓国や他の国と全然違うんです。釘を1本も使わない工法で建てられていたり、柱はあっても一つひとつの部屋をはっきりと区切っていなかったり、自然の風がよく通る造りで、湿気対策や暖房の環境づくりのために床下に工夫をしたり、渋柿で柱を磨いたりと、自然を感じることができる豊かな発想の家造りにとても心を惹かれました」
世界中を飛び回っていたユンさんは、自身が落ち着いて創作活動ができる拠点であり、さまざまなアート作品を展示する場所として、昔から興味のあった“日本の古民家”をリノベーションした美術館の建設を計画。そこから物件探しをスタートさせます。
あちこち探す中で出会ったのが、旭市にあったこの築120年を越える古民家でした。もともとは1899年(明治32年)に建てられた地域の富豪・大久保家の屋敷だった古民家で、古い母屋や納屋までとても巧みな設計がなされていることに感激したユンさんは、その希少価値を可能な限り活かして復元しようと決意します。
「私は一級建築士の資格を持っていて、実際に家や店舗を何度も建てたことがあります。この美術館も、私の理想を形にするために自分で図面を引きました」
1年以上かけて修復を行い、2021年7月に現代美術を展示する「古民家美術館飯岡」として見事にリニューアルを果たしました。美術館は約3,000平米(約900坪)の敷地に美しい庭園、ギャラリー、ゲストハウスなどを備えており、国内外から多くのゲストを迎えています。
ご自身も旅が好きだと話すユンさんの運営するゲストハウスは、アートに囲まれた古民家に泊まれるとあって、国内外のゲストに大人気。観光客の増える夏場は1日も休みがない月もあるのだそう。世界各国を飛び回り、日本語・英語・韓国語・中国語などアジア圏の言葉にも精通しているユンさんご夫妻だからこそできるゲストサポートなども好評です。
移住は古民家がきっかけでしたが、ユンさんはこのまちがアーティストにとって創作活動に適した場所だと感じるそう。
「都会にはたくさんの刺激があり、20~30代の若い頃はいいと思いますが、創作活動をするには少しうるさすぎると感じます。アーティストにとって、創作する環境はとても重要で、私は自然の多い環境の方がいい。夜は星がキラキラしていて、春には鶯、夏には蛙の声がする。可愛い野生動物が遊びに来たりして、住めば住むほど田舎は面白いですね」
また、都心部に比べて物価が安いことも活動を続ける上で大きなメリットだと言います。
「自然が豊かなだけでなく、食べ物も安くて美味しいものがたくさんあります。都内と比べると高品質な焼肉が1/3の価格で食べられるし、コストパフォーマンスが素晴らしいです!水道光熱費も安くて、私も最初はびっくりしました。今度こちらに来るアーティストたちに明細を見せてあげたいです(笑)」
アーティストだけでなく、移住者にとっても自分のやりたいことに取り組みながら、新しい環境でスタートするためには、収入源やコスト面は重要なポイントです。創作活動に加え美術館やゲストハウス、ショップの運営など複数の事業を手掛けるユンさんは、
「これからこのまちで創作活動をしたいと考えている方にはいろいろなアドバイスができると思うので、気軽に相談してもらえたらと思います」と話してくれました。
現在も多方面で活躍中のユンさんですが、さらに新しく活動の場を広げようとしています。
最近は、ユンさんのお気に入りの場所でもある飯岡灯台近くの約3,000坪の敷地に、新たにレストラン併設の美術館&グランピング施設を建設するべく、プロジェクトを進行中です。美術館は今夏オープンの予定で、合間を見つけてはコツコツと準備を進めているそう。
また、アーティストの活動支援の一環として、空き家を利用した新たな取り組みも提案しています。
「例えば、国内外で活動しているアーティストを呼んで、期間限定でアトリエとして使用できる仕組みを作るのはどうだろうかと。創作しながら週1回はアトリエを開放する日にすれば、地域の人たちがアーティストの活動を見る機会が増えるし、アーティストは作品が売れれば活動資金になります。空き家を借りる時は私が橋渡し役になるので、空き家の持ち主にも安心してもらえるんじゃないでしょうか。」
そうしたアーティスト活動のサポートを行うことで人が集まり、それが自然にまちの活性化につながれば嬉しいと話すユンさん。実際に、今年の春頃には韓国から10名以上アーティストを招き、グループ展を開催する予定です。その際は旭市の空き家を創作活動の場所として、観光ビザで3か月間レンタルし、アトリエとしてだけでなく、気軽にアートに触れられる地域の人との交流の場になればと考えています。
「移住というスタイルだけでなく、空き家シェアなどアーティストの活動を応援する仕組みをつくり、ロールモデルとして成功すれば、より豊かなまちになると思います。」
さらに、ユンさんが応援しているのはアーティストだけではありません。アートを通してまちの人たちが交流できる場所をつくりたいという思いがあります。
「例えば、昔に比べて長生きする方が増えましたが、高齢者の方々が活動したり、ゆっくりくつろいだりできる場所が少ないと感じています。絵を見て理解できなくてもいいんです。1時間でも2時間でも、お茶を飲みながらのんびりできるような、自然に人が集まるような場所をつくりたいと思っています。
そして、アートを観るだけでなく、自分を表現する楽しさをより多くの方に知ってほしいと話します。
「芸術的な絵画だけがアートではありません。子どものころ、何かをつくったり、色を塗ったりした経験は誰にでもあると思います。何かを始めるのに年齢は関係ありませんし、今は人生100年の時代ですから、70、80代から新しいことを始めてもいい。私の周りにも年齢に関係なく頑張っている人たちがいて、先日は60歳を超えたアーティスト4人が集まって展示会を行いました。」
ご自身も、旭市に来てから新たに三味線を習い始めたそう。
「今まで音楽は全然ダメだったんですが、こちらに来てご縁があったので。着物も好きで何着も持っているので、いつか海外から来たゲストの前などで、着物を着て三味線を弾きながら歌ったりしてみたいですね。きっとみんな驚くと思います(笑)」
アーティストらしい豊かな発想で、新しいことにどんどん挑戦していくユンさん。その魅力に惹かれて集まる人たちからまた、今までにない新しいまちの魅力が創造されていくのではないでしょうか。
飯岡灯台の展望台が気に入っています。目の前に海が見えて、遮るものも何もない。とてもリラックスできます。
また、龍福寺というお寺があるのですが、境内に滝が流れていたり、小さなトンネルがあったりして面白いんです。よくスケッチに出かけるお気に入りの場所です。
こちらに来てまだ1~2年ですが、周りの方が本当に応援してくれて嬉しいです。自然の多い環境も好きだけれど、とにかく人が温かいことが最高に心地いいんです。ご近所にも旭市にUターンして農業をやっている方などがいらっしゃいますが、「とうもろこしを作ったから食べて」と持ってきてくれたり、すごく大きな鯛やフグを釣れたからといただいたりして、こちらに来てから野菜や魚はほとんど買ったことがないくらいです(笑)
Living in Asahi Time.
芸術家:ユン・ソベさん/旭市三川在住
韓国・ソウル出身。築120年以上の古民家を1年以上かけてリノベーションして2021年7月にオープンした「古民家美術館飯岡」代表。ご自身もアーティストとして創作を続けながら、国内外のアーティストの新たな活動の拠点づくりを進めています。*展覧会情報など詳しくはリンクURLから。
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