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アーティストから高齢者まで
さまざまな人が交流できる新たな拠点に

芸術家:ユン・ソベさん/旭市三川在住

EPISODE

旭市で一番好きな場所に新たなアートの拠点「風の色美術館」をオープン

美しい眺望が人気の刑部岬(ぎょうぶみさき)に現れた噂の建物。この“美術館・ホテル・レストラン”を併設した「風の色美術館」の代表を務めるのが、韓国出身の芸術家ユン・ソベさんです。ヨーロッパやアジアなど各国を回りながら作品を創り、海外での展示会や現地アーティストとのコラボレーションを行うなど世界を舞台に活動していたユンさんは、14年ほど前に来日。日本での創作活動拠点のひとつとしして、旭市にある築120年を超える古民家をリノベーションし、美しい庭園やゲストハウスも備えた「古民家美術館飯岡」を2021年7月にオープン。さらに、新しいアート活動の拠点であり、地域活性化の一環としても計画を進めていた新たな施設「風の色美術館」を、2024年10月にスタートさせました。

「風の色美術館」の建つ刑部岬は、「日本の朝日百選」「日本の夕陽百選」「日本夜景遺産」「日本の夜景100選」「関東の富士見百景」「ちば眺望100景」など、数々の名所百選に選ばれるほどの眺望の美しさで知られています。ユンさんはここからの眺めが大のお気に入りで、3年ほど前から美術館オープンに向けてコツコツと準備を進めていました。彫刻・建築・家具・金属工芸・陶芸・染色など、平面から立体まで幅広く手がけるアーティスト・ユンさん。施工にあたっても業者との綿密な打ち合わせを重ね、細部にまで徹底的にこだわりながら計画を進行しました。外壁の塗装や内装などは自らが手掛けており、ひと際目を引く外壁のアートもユンさんの手によるものです。

「私が所有している美術品は6,000点を超えていると思いますが、その内200点ほどを美術館や併設しているホテル、レストランに展示しています。2024年10月のオープンの際は韓国や中国、東京のアーティストなど30人ほどが宿泊して、旭や銚子をスケッチしたり、創作活動を行ったりとこの場所を満喫してくれました」。

オープン後は韓国・中国・日本の作家総勢120人が出展した「2024年ASAHI国際美術交流展」を開催して、油絵・水彩画・彫刻・木工芸・陶芸などを展示。今後も自身の作品だけでなく、さまざまなアートと触れられる展示会を企画しています。

芸術家:ユン・ソベさん | 起業であさひ
芸術家:ユン・ソベさん | 起業であさひ

未経験のレストランも“1日ケーキ40個、パスタ100食”を売り上げる大人気店に!

持ち前の柔軟な発想と確かな実行力で、これまでいろいろな活動を行ってきたユンさんですが、併設のレストラン運営には少し勇気がいったのだとか。

「私はずっと美術の世界で生きてきて、絵のことしか知りません。『古民家美術館飯岡』では併設のゲストハウスを3年近く運営していたので、ホテル運営については少し経験がありましたが、飲食店は全くの未経験。レストランでお出しするケーキを1日どれくらい用意すればいいのかすら分からず、1週間に10個くらい売れれば…と思っていました」。

ところが蓋を開けてみると、オシャレな外観でオープン前から注目されていた「風の美術館」のレストランは、絶景を見ながらゆっくりと過ごせる場所として大人気に。ケーキは1日40個以上、パスタが100食出るという日もあり、連日多くのお客様で賑わっています。

しかも、来場者は東京や千葉市内からの観光客が大半だろうというオープン前の予想を裏切り、旭市や銚子市など近隣の方も多いのだそう。

「週末は半々ですが、平日は地元の旭市や銚子市の方が大半です。ありがたいことに、SNSや、テレビや新聞、ラジオなどのメディアでも多く取り上げていただいて、それを見てくださった方や、わざわざ検索して訪ねてきてくださる方もいらっしゃいます。地元の方からも『ユンさん見たよ』『あれに載ってたね』と声をかけていただいたりするので、もっともっと頑張っていかなければいけないなと思います」。

ユンさんは、刑部岬の魅力をより多くの方に知っていただきたいという思いから、魚料理を提供している「カントリーハウス海辺里(つべり)」、飯岡貴味メロンの生産者「フルーツファーム向後」、ブルーベリー栽培の「アグリモバード」と共に、2025年4月に「刑部岬観光活性化協議会」を発足。連携して「アート」「食」「体験観光」などの提供を行っており、レアチーズケーキにブルーベリーやメロンを添えたスイーツは、レストランの人気メニューのひとつです。

芸術家:ユン・ソベさん | 起業であさひ

アーティストから高齢者まで、さまざまな人がアートを通して交流できる豊かなまちに

自らの創作活動や美術館運営に加え、国内外のアーティストに空き家を期間限定でアトリエとして貸し出す仕組みづくりなど、アーティスト活動支援とまちの課題解決についての新たな取り組みを提案してきたユンさん。「風の色美術館」が大きな話題となったように、アートを通して人が集まり、それが自然とまちの活性化につながればと考えています。

「アーティストにとって、創作活動をする環境はとても重要です。自然が多く、季節を五感で感じることができる旭市は創作活動にぴったり。都心部に比べて物価も安いし、コストを抑えて活動できるのも利点です。これから創作活動をしたい方には、創作活動や事業経営などいろいろな面からアドバイスできると思うので、気軽に相談してもらいたいです」。

そして、以前からアートを通してまちの人たちが交流できる場所をつくりたいという思いもありました。

「昔に比べて長生きする方が増えましたが、高齢者の方々が活動したり、ゆっくりくつろいだりできる場所が少ない。美術館で絵を見て理解できなくてもいいから、1時間でも2時間でも、お茶を飲みながらのんびりできるような、自然に人が集まるような場所をつくれたら嬉しいですね」。

アートを観るだけでなく、自分を表現する楽しみとしてより多くの方に知ってほしいという思いから、水彩画教室のボランティア活動なども行っています。さらに新たなアイデアも浮かんでいるようで、

「私の知り合いで、ヘリコプターを持っている方がいるんですが、せっかくだからこのあたりにヘリポートを作ろうかなんて話も出ていて。刑部岬から銚子市の方までぐるっと回って、空からこの絶景を楽しむなんて素敵でしょう?」

大好きな場所の魅力とアートの楽しさをより多くの方に伝えするために、新たなアイデアと共に創造を続けていきます。

芸術家:ユン・ソベさん | 起業であさひ
芸術家:ユン・ソベさん | 起業であさひ

INTERVIEW

旭市のお気に入りの場所は?

今までは飯岡灯台の展望台が大のお気に入りでした。目の前に海が見えて、遮るものも何もなく、とてもリラックスできるんです。今は灯台のすぐ横にある「風の色美術館」で、日の出から日没まで、いつでも絶景を楽しむことができます。また、龍福寺というお寺があるのですが、境内に滝が流れていたり、小さなトンネルがあったりして面白いんです。よくスケッチに出かけるお気に入りの場所です。

地域とのつながり方は?

旭市に来てからは、周りの方が本当に応援してくれて嬉しいです。自然の多い環境も好きだけれど、とにかく人が温かいことが最高に心地いいんです。ご近所にも旭市にUターンして農業をやっている方などがいらっしゃいますが、「とうもろこしを作ったから食べて」と持ってきてくれたり、すごく大きな鯛やフグを釣れたからといただいたりして、こちらに来てから野菜や魚はほとんど買ったことがないくらいです(笑)

芸術家:ユン・ソベさん | 起業であさひ

Living in Asahi Time.

Profile

芸術家:ユン・ソベさん/旭市三川在住

韓国・ソウル出身。築120年以上の古民家をリノベーションした「古民家美術館飯岡」代表を経て、2024年10月新たに「風の色美術館」をオープン。美術館にホテル・レストランを併設したこの施設には、国内外からアーティストや観光客、地域の人々などさまざまな方が訪れ、早くも旭の名所のひとつに。また、自身もアーティストとして創作を続ながら、国内外のアーティストの新たな活動の拠点づくりにも精力的に取り組んでいる。

URL
https://cafe.daum.net/SOBE

PHOTO SNAP

芸術家:ユン・ソベさん | 起業であさひ
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